前回の記事では老後資金と配当投資の考え方についてご説明しました。今回は、長期投資の最大の味方といわれる複利効果と、配当投資ならではの配当再投資の力を解説します。
「複利って聞いたことはあるけど、よくわからない」「配当金は使ったほうがいいの?再投資したほうがいいの?」という疑問に、具体的な計算例でお答えします。
単利と複利の違い
単利とは
最初の元本にだけ利息(配当)がつく仕組みです。受け取った配当金は使ってしまうか、手元に置いておくイメージです。
複利とは
元本+これまでに増えた分に利息(配当)がつく仕組みです。受け取った配当金を再投資することで、次の年はさらに多くの配当が生まれます。
単利:100万円 → 104万円 → 108万円 → 112万円 …(毎年4万円ずつ増える)
複利:100万円 → 104万円 → 108.2万円 → 112.5万円 …(増える額が毎年大きくなる)
最初の数年はほとんど差がありませんが、時間がたつほど差がどんどん開いていくのが複利の特徴です。これを、坂道を転がるうちに大きくなる雪だるまにたとえて「雪だるま式」と呼びます。
配当再投資とは?
配当再投資とは、受け取った配当金を使わずに、株式の買い増しに回すことです。
配当金を受け取る
↓
その配当金で株を買い増す
↓
保有株数が増える
↓
次の配当金が増える
↓
さらに買い増す …(くり返し)
配当金が新しい株を買い、その株がまた配当金を生む。配当が配当を生む流れをつくるのが配当再投資です。
計算例①:100万円を配当利回り4%で運用した場合
※株価は一定、減配なし、新NISA口座(非課税)と仮定した試算です。
| 経過年数 | 配当を受け取るだけ(単利) | 配当を再投資(複利) | 再投資後の年間配当 |
|---|---|---|---|
| 5年 | 120万円 | 約122万円 | 約4.9万円 |
| 10年 | 140万円 | 約148万円 | 約5.9万円 |
| 20年 | 180万円 | 約219万円 | 約8.8万円 |
| 30年 | 220万円 | 約324万円 | 約13.0万円 |
※「配当を受け取るだけ」は、株式100万円+受け取った配当金の合計です。
10年では差は8万円ほどですが、30年では100万円以上の差になります。また、再投資を続けると年間に受け取る配当金そのものが3倍以上に増えていきます。
計算例②:毎月コツコツ積み立てて再投資した場合
※20年間、毎月一定額を積み立て、配当利回り4%で配当をすべて再投資。株価は一定、減配なし、非課税と仮定した試算です。
| 毎月の積立額 | 投資した元本の合計 | 20年後の資産 | 20年後の年間配当 |
|---|---|---|---|
| 3万円 | 720万円 | 約1,100万円 | 約44万円 |
| 5万円 | 1,200万円 | 約1,834万円 | 約73万円 |
| 10万円 | 2,400万円 | 約3,668万円 | 約147万円 |
再投資をせずに積み立てだけを続けた場合、毎月5万円の例では20年後の年間配当は48万円です。再投資をした場合は約73万円になり、同じ元本でも年間で約25万円の差が生まれます。
配当再投資の力が、時間とともにいかに大きくなるかがわかります。
「72の法則」で資産が2倍になる年数を知る
複利でお金が2倍になるまでの年数は、72の法則でざっくり計算できます。
資産が2倍になる年数 ≒ 72 ÷ 利回り(%)
| 利回り | 2倍になるまでの年数(目安) |
|---|---|
| 3% | 約24年 |
| 4% | 約18年 |
| 6% | 約12年 |
配当利回り4%で再投資を続けると、約18年で資産が2倍になる計算です。
複利効果を高める3つのポイント
① 時間をかける
複利は時間が長いほど力を発揮します。計算例①でも、10年と30年では差の大きさがまったく違いました。早く始めることが最大のポイントです。
② 税金を減らす(新NISAの活用)
特定口座では配当金に約20%の税金がかかるため、再投資に回せる金額が減ってしまいます。
| 経過年数 | 特定口座(税引き後で再投資) | NISA口座(非課税で再投資) |
|---|---|---|
| 10年 | 約137万円 | 約148万円 |
| 20年 | 約187万円 | 約219万円 |
| 30年 | 約256万円 | 約324万円 |
※100万円、配当利回り4%、株価一定と仮定した試算です。
30年後には約68万円の差になります。第3回で解説したとおり、新NISAの非課税メリットは、複利と組み合わさることでさらに大きくなります。
③ 増配株を選ぶ
ここまでの計算は「配当が一定」という仮定でしたが、実際には増配する企業を選ぶことで、複利の力がさらに強まります。
たとえば配当利回り4%で購入した株が、毎年3%ずつ増配を続けると、購入価格に対する利回り(第10回で解説したYOC)は次のように上がります。
| 経過年数 | YOC(取得原価利回り) |
|---|---|
| 購入時 | 4.0% |
| 10年後 | 約5.4% |
| 20年後 | 約7.2% |
再投資による株数の増加と、増配による1株あたり配当の増加。この2つが重なるのが、配当投資の複利の強みです。
再投資するときの注意点
① 株価は一定ではない
実際の株価は上がったり下がったりします。株価が下がっているときに再投資すれば、より多くの株を買えるという面もあります。
② 減配のリスクもある
業績が悪化すれば減配することもあります。計算どおりに増えるとは限らないことを理解しておきましょう。
③ 1銘柄に再投資を集中させない
配当をくれた銘柄にそのまま再投資し続けると、知らないうちに比重が大きくなることがあります。再投資先も分散を意識することが大切です。
④ 老後は「受け取る」段階に切り替える
前回の記事で解説したとおり、現役のうちは再投資で配当を育て、定年後は配当を生活費として受け取る段階に切り替える、という考え方もあります。
筆者メモ 私は受け取った配当金を、毎日の購入資金の一部として再投資しています。配当金が入金されると「この配当で、また1株買える」と思えるのが楽しみのひとつです。最初は小さな配当でも、再投資と増配が重なると少しずつ年間配当が増えていくのを実感しています。配当金100万円という目標も、この雪だるまを毎日少しずつ大きくしていった先にあると信じて、コツコツ続けています。
複利の計算やシミュレーションができるサイト
- 金融庁 資産運用シミュレーション:積立額・利回り・期間から将来の資産額を試算可能
- SBI証券・楽天証券:NISA口座での配当金受取・再投資の管理に活用
- 株探(かぶたん):連続増配株や配当の推移を確認しやすい
- Yahoo!ファイナンス:保有銘柄の配当情報を確認可能
- 会社四季報オンライン:銘柄ごとの配当推移データを掲載
まとめ
- 単利は元本にだけ、複利は元本+増えた分に配当がつく
- 配当金を株の買い増しに回す配当再投資で、配当が配当を生む流れをつくれる
- 複利の差は時間がたつほど大きく開く
- 「72÷利回り」で、資産が2倍になる年数の目安がわかる
- 複利効果を高めるカギは、時間・新NISAの非課税・増配株の3つ
- 計算どおりにいくとは限らないため、分散と長期目線を忘れずに
複利の仕組みを知ると、毎日のコツコツとした積み上げが、将来大きな力になることが実感できます。次回は「配当金100万円への道③・1年の振り返り」として、この1年間の投資を振り返ります。
※この記事の試算は、株価一定・減配なしなど一定の条件を仮定したものです。実際の運用成果を保証するものではありません。
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