前回の記事では株式分割・自社株買いについてご説明しました。今回は、株価の大きな流れを理解するうえで欠かせない景気サイクルと株式投資の関係を解説します。
「景気が良いと株価が上がる」というイメージはあっても、「どの局面でどんな業種が強いのか」まで知っている方は少ないかもしれません。この記事を読めば、ニュースで流れる経済指標と自分の保有銘柄のつながりが見えるようになります。
景気サイクルとは?
景気サイクルとは、景気が良くなったり悪くなったりを繰り返す波のことです。経済は一直線に成長するのではなく、拡大と後退を繰り返しながら進んでいきます。
一般的に、景気サイクルは次の4つの局面に分けて考えられます。
③ 好景気(ピーク)
/ \
② 回復期 ④ 後退期
\ /
① 不況(底)
| 局面 | 景気の状態 | 金利の傾向 | 株式市場の雰囲気 |
|---|---|---|---|
| ① 不況(底) | 企業業績が悪化、雇用も弱い | 低い(金融緩和) | 悲観的、株価は安値圏 |
| ② 回復期 | 業績が持ち直し始める | 低いまま | 株価が先回りして上昇 |
| ③ 好景気 | 業績・雇用ともに好調 | 上昇(引き締め) | 楽観的、株価は高値圏 |
| ④ 後退期 | 業績の伸びが鈍化・悪化 | 高い水準から低下へ | 株価が先回りして下落 |
株価は景気より「先に」動く
ここが大切なポイントです。株価は将来の業績を予想して動くため、実際の景気よりも半年〜1年ほど先に動くと言われています。景気が最悪のときに株価が底を打ち、景気が絶好調のときに株価がピークを迎えていることも珍しくありません。
局面ごとに強いセクター
第13回でセクター分類を解説しましたが、景気サイクルの局面によって強いセクターが入れ替わる傾向があります。これをセクターローテーションと呼びます。
① 不況(底)の局面
強いセクター:ディフェンシブ株(食品・医薬品・電力・ガス・通信)
景気が悪くても、食べ物や薬、電気・ガス・通信は生活に欠かせません。業績が景気に左右されにくいため、相対的に株価が底堅くなります。
② 回復期の局面
強いセクター:金融(証券)・不動産・情報通信
金利が低い状態が続く中で景気が持ち直すと、借入コストが低い不動産や、株式市場の活況が追い風になる証券会社などが注目されやすくなります。
③ 好景気の局面
強いセクター:景気敏感株(自動車・機械・鉄鋼・化学)・素材
企業の設備投資や消費が活発になり、景気の影響を大きく受ける業種の業績が大きく伸びます。資源価格が上がりやすい時期でもあり、商社や資源関連も追い風を受けやすくなります。
④ 後退期の局面
強いセクター:ディフェンシブ株(食品・医薬品・電力・ガス)・銀行
景気の先行きに不安が出てくると、投資家は再び安定した業種へ資金を移します。金利が高い水準にある時期は、利ざやが広がりやすい銀行が評価されることもあります。
局面ごとの強いセクター一覧
| 局面 | 強いとされるセクター | 理由 |
|---|---|---|
| ① 不況 | 食品・医薬品・電力・ガス・通信 | 景気に左右されにくい需要 |
| ② 回復期 | 証券・不動産・情報通信 | 低金利と景気回復の期待 |
| ③ 好景気 | 自動車・機械・鉄鋼・化学・商社 | 設備投資・消費・資源価格の上昇 |
| ④ 後退期 | 食品・医薬品・電力・銀行 | 安定志向・金利水準の高さ |
※あくまで一般的な傾向であり、毎回この通りに動くわけではありません。
景気の局面を知る手がかり
景気が今どの局面にあるかは、いくつかの経済指標から手がかりを得られます。
① 日銀短観(全国企業短期経済観測調査)
日本銀行が年4回発表する、企業の景況感の調査です。「景気が良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いた業況判断DIが注目されます。
② 景気動向指数
内閣府が毎月発表する指標で、景気の現状や先行きを数値で示します。株価や新規求人数などを含む先行指数は、景気の先行きを読むヒントになります。
③ 政策金利
日本銀行が決める金利の水準です。金利を下げるのは景気を下支えしたいとき、上げるのは景気の過熱を抑えたいときで、景気局面の大きな手がかりになります。
配当投資家は景気サイクルとどう付き合う?
ここまで読むと「局面に合わせて銘柄を入れ替えたほうがいいのでは?」と感じるかもしれません。しかし、景気の転換点を正確に当てるのはプロの投資家でも非常に難しいことです。
長期保有を前提とした配当投資では、次のような付き合い方がおすすめです。
① 景気を「当てる」のではなく「備える」
どの局面が来ても大きく崩れないよう、ディフェンシブ株と景気敏感株をバランスよく組み合わせておくことが大切です。
② 景気敏感株は減配リスクを意識する
自動車・鉄鋼・化学・商社などは好景気には大きく増配しますが、不況期には減配することもあります。配当性向の目安を設けている企業や累進配当を宣言している企業を選ぶと、不況期の減配リスクを抑えやすくなります。
③ 不況期は「買い増しのチャンス」と考える
景気が悪化して株価が下がる局面は、同じ金額でより多くの株数を買え、配当利回りも高くなりやすい時期です。毎日コツコツ購入を続けていれば、自然と安い局面でも多く買えることになります。
筆者メモ 私は景気の先読みはせず、毎日1株以上の購入を淡々と続けています。そのかわり、ポートフォリオの中に金融・商社のような景気の影響を受けやすい銘柄と、通信・食品のように景気に左右されにくい銘柄の両方を持つよう意識しています。どちらかに偏らないことで、景気がどちらに転んでも配当金全体が大きく落ち込みにくい形を目指しています。
景気・経済指標はどこで確認できる?
- 日本銀行:日銀短観や政策金利の発表を公式に確認可能
- 内閣府:景気動向指数などの統計を公式に確認可能
- SBI証券・楽天証券:経済指標カレンダーやマーケットレポートを確認可能
- 株探(かぶたん):業種別の株価動向やニュースを確認しやすい
- Yahoo!ファイナンス:業種別指数や市場全体の動きを確認可能
- JPX(日本取引所グループ):東証33業種の分類や業種別指数を公式確認可能
まとめ
- 景気は不況→回復期→好景気→後退期の4つの局面を繰り返す
- 株価は景気より半年〜1年先に動く傾向がある
- 局面ごとに強いセクターが入れ替わる(セクターローテーション)
- 景気の局面は日銀短観・景気動向指数・政策金利などで手がかりを得られる
- 配当投資では景気を当てるより、ディフェンシブ株と景気敏感株のバランスで備えることが大切
- 不況期は買い増しのチャンスと捉え、毎日の積み上げを続ける
景気サイクルを理解すると、相場が荒れたときにも落ち着いて行動できるようになります。次回は「老後資金と配当投資の考え方|定年後の生活費を配当金でまかなう逆算プラン」についてわかりやすく解説します。
この記事が参考になりましたら、ぜひブックマークやシェアをお願いします。

コメント